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『体系漢文法演習』のこと

(内容:数研出版『体系漢文演習』執筆時のエピソード。)

私が今の『真に理解する漢文法』の前身になる『概説 漢文の語法』を書き終えたのが2014年の暮れでした。
漢文の授業は、生徒の理解度に応じながらではありましたが、ほぼ全面的に古典中国語文法での解説にシフトしました。
漢文の合理的な説明が可能になり、「今まで何となく…だった漢文の構造が、ちゃんとわかるようになった」と評判も上々でした。
日々、古典中国語文法の研究を続け、若手の先生にも少しずつ伝え、この方法が今の高等学校の現場に生かされればいいなと思い続けてきました。

そんな中で、文の成分の理解と、品詞の確定が重要だと思うようになり、授業の中でも、成分と品詞の関連を意識づけるよう配慮するようになりました。
「授業の中で私が口にする品詞は、古典中国語としての品詞。日本語の品詞の場合は、必ず、たとえば『日本語の形容詞』というふうに断る」と注意して、構造理解の要になる文例を説明するときには、成分と品詞の確定に心を配りました。

2017年の秋に、数研出版編集者のKさんと、新たな問題集を出す件について打ち合わせをすることになり、私は心ひそかにある提案をするつもりでした。
それは、問題集収録の文章について、すべて成分と品詞を明示するというもの、そう、ちょうど古文の問題集がそうであるようにです。
でも、それは必ずやKさんに、まだ時期尚早と一蹴されると思ってもいました。

Kさんが新たな問題集のポリシーを説明された時、正直驚きました。
私が提案しようとしていたものとドンピシャリ一致していたからです。
それは『体系漢文 改訂版』のさらに先を行くものでした。
『体系漢文』では、まだ現場の先生方の使い勝手を配慮して、内容的にある程度抑えられている面もあるのですが、この問題集はそれすらも跳び越えていたのです。
「漢文教材の分野に一石を投じる」というKさんの言葉は、私の願いそのものでした。

そればかりか、私が心の中に潜めていた「文の成分と品詞の確定」も行うという企画、正直心が震えました。

この問題集はきっと売れないだろう…私はそう思いました、高等学校対象の問題集としては先を行きすぎている…、でも、これは売れる売れないにかかわらず間違いなく高等学校漢文教育の歴史を変える一石になる、そう信じました。

「体系漢文法演習」の画像

「語順のきまりを理解して漢文を読み解く」、そう『体系漢文法演習』の表紙には書かれています。
あえてした軽い書き方です、でもその背景にあるものは、とても重い。
それは高等学校の漢文に、まっとうな角度から斬り込んでいく姿勢そのものでした。

この問題集を上梓するにあたっても、執筆者の私と編集者のKさんの激しいバトルが何度も繰り返されました。
まだまだの部分もあります。
なによりもう少し題材文が面白いものにならないか…
いろいろと思うことはあるのですが…

『体系漢文法演習』と同じ試みをしたのが、先日アップした『史記』「鴻門の会」語法注解です。
成分と品詞を確定すること、漢文を古典中国語として捉え直すことにどんな意味があるのか、『体系漢文法演習』と併せて見ていただければと思います。

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