『体系漢文』のこと
- 2020/03/31 18:28
- カテゴリー:体系漢文
(内容:数研出版『体系漢文』執筆時のエピソード。)
移転前のブログでは素性を隠していたので、自分が数研出版の『体系漢文』の著者であるなど、書けるわけもなかったのですが…
他の同系の書籍とは一線を画した内容なので、ほんとに利用されてる?と常々思っていましたが、一緒に仕事をしている編集者に、それなりに注目はされていると知らされていたので、そうなのかな?と、まあ思っておくことにしていました。

『体系漢文』を最初に書いたのはいつだったでしょうか、もうずいぶん前のような気がします。
ちょうど私が『真に理解する漢文法』の前身『概説 漢文の語法』を書き始めた頃でしたか、いつも一緒に仕事をする数研出版編集員Kさんと、その方向、つまり古典中国語文法の視点で、学校教材を作ってみようと意気投合したのでした。
色々と企業秘密もあるだろうから、出版に関する詳しいことは書けませんが、このKさんという方は実に有能なひとで、古典中国語文法についての造詣もいたって深く、私自身が刺激を受けることも多々あります。
そしてなにより私が幸せだったことは、Kさんが編集者として実に厳しく、一切の妥協を許さない方だったということです。
常々思います…
世の中には高等学校向けの参考書や問題集があふれていますが、どの書籍をみても、実に誤りが多い。
ところが、わざわざ連絡して、その誤りを指摘し、丁寧かつ詳細に誤りである理由を教えてさしあげても、なかなか直してくださらない。
これは、執筆者と編集者のバランス関係が悪いのが原因のひとつではないでしょうか。
一高校の先生に誤りだと指摘されて執筆者のプライドが傷つくのでしょうか?
でも、編集員がしっかりしていれば、誤りは誤りとして正すべきだと、執筆者に迫ることができます。
また、編集員の力が強すぎれば、執筆者は諦めて本当に書きたいことも書けなくなってしまいます。
私は幸いにも、そのバランスが絶妙の中で仕事をすることができました。
『体系漢文』を書くにあたって、Kさんとは何度激しいバトルになったことでしょう…
私が突っ走ってしまえば、あまりにも高等学校の現場ニーズとかけ離れた『体系漢文』になってしまっただろうし、Kさんが私の思いを考えずに一歩も引かなければ、私は仕事に意欲を失ってしまったでしょう。
今の高等学校の現場の状況を見据えて、現段階での『体系漢文』は、「入門編」「句法編」「文法編」の各分野において、私がなんとか譲れるところまで譲った内容になっています。
書きたいことは本当はもっとある、
でも、少しずつ少しずつ、そしていつか「今の漢文教育に風穴をあけてやろう!」と、Kさんと一緒に頑張ってきました。
たとえば、初版では「補語」という用語を、いわゆる「何に、何より…」にあたる語として残しました。
これには私はひどく反対で、それは賓語もしくは介詞の賓語であって、それはそうと正しく説明すべきだと主張したのですが… Kさんはもちろんそんなことはわかった上での編集者としての判断…その当時はまだその段階。
ですが、改訂版ではいわゆる「補語」の取り扱いを変更し、賓語(目的語)と介詞句(前置詞句)の説明を正しく行いました。
そう、現場の状況を見ながら、そのように少しずつ少しずつです。
いつかは『真に理解する漢文法』の内容とほぼ同じ方向といえるような『体系漢文』にしたいものだと思っていますが、きっとまたKさんに叱られてしまうでしょうね。
勇み足だ、まずは現場の先生方にとって使いやすいものでなければならないと。
『体系 漢文法演習』のことについては、また項をあらためて書きたいと思います。
移転前のブログでは素性を隠していたので、自分が数研出版の『体系漢文』の著者であるなど、書けるわけもなかったのですが…
他の同系の書籍とは一線を画した内容なので、ほんとに利用されてる?と常々思っていましたが、一緒に仕事をしている編集者に、それなりに注目はされていると知らされていたので、そうなのかな?と、まあ思っておくことにしていました。

『体系漢文』を最初に書いたのはいつだったでしょうか、もうずいぶん前のような気がします。
ちょうど私が『真に理解する漢文法』の前身『概説 漢文の語法』を書き始めた頃でしたか、いつも一緒に仕事をする数研出版編集員Kさんと、その方向、つまり古典中国語文法の視点で、学校教材を作ってみようと意気投合したのでした。
色々と企業秘密もあるだろうから、出版に関する詳しいことは書けませんが、このKさんという方は実に有能なひとで、古典中国語文法についての造詣もいたって深く、私自身が刺激を受けることも多々あります。
そしてなにより私が幸せだったことは、Kさんが編集者として実に厳しく、一切の妥協を許さない方だったということです。
常々思います…
世の中には高等学校向けの参考書や問題集があふれていますが、どの書籍をみても、実に誤りが多い。
ところが、わざわざ連絡して、その誤りを指摘し、丁寧かつ詳細に誤りである理由を教えてさしあげても、なかなか直してくださらない。
これは、執筆者と編集者のバランス関係が悪いのが原因のひとつではないでしょうか。
一高校の先生に誤りだと指摘されて執筆者のプライドが傷つくのでしょうか?
でも、編集員がしっかりしていれば、誤りは誤りとして正すべきだと、執筆者に迫ることができます。
また、編集員の力が強すぎれば、執筆者は諦めて本当に書きたいことも書けなくなってしまいます。
私は幸いにも、そのバランスが絶妙の中で仕事をすることができました。
『体系漢文』を書くにあたって、Kさんとは何度激しいバトルになったことでしょう…
私が突っ走ってしまえば、あまりにも高等学校の現場ニーズとかけ離れた『体系漢文』になってしまっただろうし、Kさんが私の思いを考えずに一歩も引かなければ、私は仕事に意欲を失ってしまったでしょう。
今の高等学校の現場の状況を見据えて、現段階での『体系漢文』は、「入門編」「句法編」「文法編」の各分野において、私がなんとか譲れるところまで譲った内容になっています。
書きたいことは本当はもっとある、
でも、少しずつ少しずつ、そしていつか「今の漢文教育に風穴をあけてやろう!」と、Kさんと一緒に頑張ってきました。
たとえば、初版では「補語」という用語を、いわゆる「何に、何より…」にあたる語として残しました。
これには私はひどく反対で、それは賓語もしくは介詞の賓語であって、それはそうと正しく説明すべきだと主張したのですが… Kさんはもちろんそんなことはわかった上での編集者としての判断…その当時はまだその段階。
ですが、改訂版ではいわゆる「補語」の取り扱いを変更し、賓語(目的語)と介詞句(前置詞句)の説明を正しく行いました。
そう、現場の状況を見ながら、そのように少しずつ少しずつです。
いつかは『真に理解する漢文法』の内容とほぼ同じ方向といえるような『体系漢文』にしたいものだと思っていますが、きっとまたKさんに叱られてしまうでしょうね。
勇み足だ、まずは現場の先生方にとって使いやすいものでなければならないと。
『体系 漢文法演習』のことについては、また項をあらためて書きたいと思います。