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(内容:清の劇作家である李漁(李笠翁)の有名な「十便十宜詩」の注解。はじめに。)
李漁『十便十宜』詩 注解
■はじめに
明末清初の戯曲家李漁(りぎょ)の作とされる「十便十宜」詩は、邦人江戸の文人画家池大雅(いけたいが)による「十便帖」、与謝蕪村による「十宜帖」によって絵画に描かれ、その合作「十便十宜帖」は国宝としても名高いが、本家の中国であまり取り上げられないせいか、詩自体の注解を見かけない。山麓に庵を結び世と隔絶する李漁に、訪れた客人が閑静ではあっても不便ではと問いかけると、李漁は大自然の恵みの中にあり、決して不便ではないことを詩に託して述べたという。もとより中国に脈々と続く道家思想由来の理想郷の延長上にあり、画題としての位置づけも頷けるものがある。以下、十便十宜詩の注解を試み、「十便十宜帖」鑑賞の一助にしたい。
なお、本文は鑑賞の便に留意し「十便十宜帖」に書かれた文言を底本とするが、『李漁全集第二巻・笠翁一家言詩詞集』(浙江古籍出版社刊)を参照して文字の異同を確認した。参考にすべき先人による注釈の類がほぼ皆無に近く、浅学ゆえに誤謬も多くあろうかと思う。ご指摘いただければありがたい。
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