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4.灌園便(畑に水をやる便利さ)
■原文
築成小圃近方塘
菓易生成菜易長
抱甕太癡機太巧
従中酌取灌園方
■書き下し文
小圃(せうほ)を築成(ちくせい)して方塘(はうたう)に近し
菓は生成し易く菜は長じ易し
甕(をう)を抱くは太(はなは)だ癡(ち)なるも機は太だ巧みなり
中より酌取(しやくしゆ)す灌園(くわんゑん)の方(はう)
■口語訳
小さな畑を四角の池の近くに設けている
果物は生りやすく野菜は育ちやすい
水がめを抱いたさまはのろまでも水やりの手際はよく
中から汲んでは撒水するのが水やりの方法
■注
【小圃】
《小さな畑》
「圃」は畑。菜園、果樹園も含む。
【方塘】
《四角い池》
「方」は四角の意。「塘」は池の意。
【易】
後に動詞句を伴って「~しやすい」という意味を表す形容詞で、「難」の対義語。訓読の習慣として「易」をいわゆる返読文字として「菓は生成し易く」「菜は長じ易し」と読んでいるため、特殊な語のように見えるが、実は「菓は易く生成し」「菜は易く長ず」とすれば、「易」が「生成」「長」を修飾する、形容詞が副詞に活用したものだということが理解しやすくなる。
【甕】
《水や酒を入れるかめ》
【太癡】
《とても愚かである、のろまである》
「太」は程度が甚だしいことを表す副詞で、「とても・非常に・~すぎる」などと訳す。
「癡」は、本来「機転がきかない」の意の形容詞で、後の「巧」に対応するものだ。
池から汲んだ水を入れたかめは当然重く、それを持ち運ぶさまを表現したもの。
【機】
「機」は、時機・タイミングのこと。水まきのタイミングがよい、あるいは撒水のしかたがよいとの意味か。
【従中】
《中から》
「従」は動作の起点、または場所を表す介詞で、賓語「中」を伴って介詞句をつくり、謂語「酌取」を修飾している。
【灌園】
《畑に水をやる》
【方】
《方法》
方角の意味ではなく、方法の意。水やりのしかたという意味。