お勧めの漢文法(古典中国語文法)書 等(大学生・教員・一般の方 対象)

(内容:大学生や教員が漢文を学習する上での参考書を紹介。)

漢文を読み解く力をつけたい大学生や高等学校の先生方、その他一般の方へ、お勧めの参考書を紹介します。

どうしても現行の新しい参考書がほしいという方が多いと思いますが、残念ながら現在普通に店頭で出版されている書籍には、ほとんど「これが良い!」とお勧めできるものがありません。

そこで、古書になりますが、手元に置いておくとよいと思えるものを紹介します。

■漢文法の参考書
これから紹介する書籍は、「日本で唯一、漢文の文法を論じていると言い得る1冊」になります。

1.『標準漢文法』〔松下大三郎〕
(紀元社1927)
「標準漢文法(松下大三郎)」の写真

とにかく難解な書です。
ですから、「お勧めの参考書」といいながら、是が非でもこれを読むべしというつもりはありません。
ただ、他の文法書といわれるものは、古典中国語として論じたものか、あるいは、文法ではなく句法の書であって、真の意味で漢文の文法書と言い得るのは、この書の他にはありません。

拙ブログで、しおり付きのPDFを公開していますので、まず試しにご参照ください。
その上で「これはちょっと無理…」とお感じの場合は、無理にはお勧めしません。

管理人が初めて『標準漢文法』を読了した時の印象を、エントリー「其れ猶ほ龍のごときか…」で記していますので、ご参考までに。

今もなお、何度読んでもわからぬことが多く、いつも読み返しています。
そして読むたびに、必ず発見があります。
『標準漢文法』は、管理人の漢文に対する考え方を根本から変えた1冊と言ってもいいでしょう。


■漢文の語法・古典中国語文法の参考書

いわゆる漢文の語法について論じている名著を紹介します。

1.『漢文の語法』〔西田太一郎〕
(角川書店1980)
「漢文の語法(西田太一郎)」の写真

手に入るなら、ぜひ持っていたい名著です。
古典中国語文法を解説したものではなく、従来の漢文の句法に則ったものではありますが、多くの例文を背景に語義や用法が語られています。
上の画像は角川小辞典のものですが、2023年に「角川ソフィア文庫」として復刊されたので、入手は簡単でしょう。
ただし、角川小辞典版には、筆者が同じ小辞典シリーズの柳町達也『漢文読解辞典』の誤りを、実に60頁にわたって痛烈に批判した部分があるのですが、ソフィア版ではその部分はカットされているそうです(これは未確認ですので、間違っていたらごめんなさい)。


2.『新訂 漢文法要説』〔西田太一郎〕
(朋友書店2018)
「新訂漢文法要説(西田太一郎)」の写真

小冊子という感じですが、中身は秀逸です。
現在も朋友書店で購入できます。
書店いわく、「漢文の初歩から大学の教養課程程度の読者を対象とした漢文法要説。漢文の一定の語順について説明し、次に漢文独自の文字の用法や文体を説く。」
私的には、1の『漢文の語法』よりも役に立つことが多いです。
ぜひ、手元に置いておかれるとよいかと思います。


3.『中国古代語法の研究』〔鈴木直治〕
(汲古書院1994)
「中国古代語法の研究(鈴木直治)」の写真

書店いわく「Ⅰ発話の重点と強調の表現 Ⅱ主要な虚詞の消長  Ⅲ古代漢語における指示詞の体系 Ⅳその他、 よりなる。 漢語の特質に即して語法を捉える事を軸に、 豊富な用例をもとに具体的に解明する」。
いわゆる語法の書とは異なる切り口から、明快に語や語句の働きを解き明かしている名著だと思います。


4.『古典中国語文法 改訂版』〔太田辰夫〕
(汲古書院1984(1964))
「古典中国語文法 改訂版(太田辰夫)」の写真

もとは「論語文法研究」「孟子文法研究」「壇弓文法略説」であったものの合冊版です。
書店いわく「語順・文の成分・連語、 名詞・動詞・形容詞・代名詞など細目に分けて論語・孟子などについて説明した入門書」。
時代的には狭められるのですが、大いに参考になる書です。


5.『古漢語語法及其発展(修訂本)』〔楊伯峻/何楽士〕
(語文出版社2001)
「古漢語語法及其発展(楊伯峻/何楽士)」の写真

中国の文言語法について、非常に広範囲にわたって詳細に述べられているものです。
上下2冊からなり、もちろん中国語で書かれていますが、全体像をつかむなら、まずお勧めしたい書ですが、現在入手が困難という情報を得ました。